Weekend In 心は L.A.

音楽と楽器、そして時々海外に

 

ロータスの伝説(1974) By Santana クロスオーバー期の最高傑作だったのか?



[Member]
Carlos Santana : guitar, Latin percussion
Leon Thomas : maracas, vocals
Tom Coster : Hammond organ, electric piano, Yamaha organ
Richard Kermode : Hammond organ, electric piano
Doug Rauch : bass
Armando Peraza : congas, bongos, Latin percussion
Jose "Chepito" Areas : timbales, congas, Latin percussion
Michael Shrieve : drums, latin percussion

3枚組という内容に加え、横尾忠則のデザインしたLP22面ジャケットは、広げると四畳半一杯に広がるという都市伝説まで作ったこのアルバム。この時代は、プログレ全盛期ということもあり、曲は長いほうが偉い、LPは曲が少ないほど偉い、ジャケットはオマケが沢山付いている方が偉い、レスポールは重いほうが偉い、という重厚長大、戦艦大和か万里の頂上のような価値観がロック界を支配していた時代でした。このアルバムは、そんな時代のど真ん中でリリースされたもので、今でもサンタナのライブアルバムと言えば、これが代表作なのは間違いないでしょう。

Caravan Sarai、Welcome、Borborettaの3部作の仕上げのようなこのアルバムは、1973年7月の日本公演の録音で、メンバーはWelcomeとまったく同じ。サンタナ史上一番のテクニカルベーシスト Doug Rouch が抜けたのが1973年末ですから、Welcome発表からの1年間がサンタナ史上最強のメンバーだったと信じています。

サンタナのメンバーチェンジは、Carlos Santanaの実現したいサウンドに合うメンバーをリクルートする過程で、首になったか本人が嫌気がさしたというパターンが多いのですが、Doug Rouch は脱退直後、Billy CobhamやLenny Whiteなどとバリバリのフュージョンアルバムを作っていることを考えると、本人がロックバンドに飽き足らず、本格ジャズフュージョンの世界を志向したためと想像します。
この時 Doug Rouch は24歳。28歳でその人生を終えたのは本当に残念。その後、20年以上第1線で活躍できたベースプレイヤーだったと思います。


Backstreet in Shanghai (1) 2012.8

今回、記事を書くにあたって面白いことを発見しました。
ロータスツアー日本公演の様子がYouTubeにアップされています。「SANTANA Lotus Tour Japan 1973 ①②③」は3本で67分という貴重な映像音源。30分のTV番組3回分という結構なボリューム。
CDを聞いただけでは、2人のキーボードのうちどちらがどのフレーズを弾いているのかはっきりわかり難くていらいらするのですが、この映像をみると2人の分担がはっきりわかって非常に興味深い。
(こんなことを気にするのは私位か?)
Doug Rouchの演奏映像も、今となっては非常に貴重です。

今回、聞きなおすまで、私はてっきりこの映像がCD「ロータスの伝説」の映像版だと思い込んでました。が、違っていました。つまり大阪厚生年金会館(7/3-4)の映像ではなかった。
よく聞き比べれば違いがわかります、と言いたいところですが、曲順が異なるのですぐにわかります。
(CDは2曲目のA-1 FunkからEvery Step of the Wayですが、映像はStone Flowerだとか。)

いったい、このYouTube映像はいつのものなのか。1973年のロータスツアー日本公演は、6/27の東京公演を皮切りに、7/11の札幌公演まで11回行われているので、このうちのどれかには違いないはず。
ライブツアーをCDにする場合、それぞれの曲について出来のいい演奏を11回の公演からピックアップすることが多いのですが、サンタナの場合は、CDはあくまで大阪厚生年金会館(7/3-4)の演奏だし、YouTube映像も明らかにどこか特定の1公演のようです。
(これは、録音状態の都合か、Carlos Santanaのポリシーか。)

そう思ってもう一度YouTube映像をじっくり見ると、さらに不思議なことが。サンタナはかなりラフな感じで弾いているし、観客やライブステージの熱気感がまったく感じられない。これ本当にロータスツアーの公演映像なのか?見れば見るほどスタジオライブのような感じがしてきました。人気絶頂のサンタナのライブ映像を流したいという日本のTV局のオファーに、日本公演のライブは駄目だけど、USAで収録したスタジオライブの映像ならいいよ、ということでサンタナマネージメント側から提供があったのではないか?(今で言うPV。)というのが、私の推測です。皆さんはどう思います?

今回、20年ぶり位にロータスの伝説を(加えてYouTube映像3本を)通して聞きました。ともかく長尺なので、前回、通しで聞いた記憶が残っていません。意外だったのは、この2つの音源とこれまでのオリジナルをじっくり聞いてみると、CDロータスの伝説の演奏内容が、結構ラフな感じを受けたことです。(例えば、このツアーの山場である、最後の曲”Incident At Neshabur”とか。)原因の一つは、メンバーになってまだ浅いTom Costerのプレイにちょっと違和感を感じるような、音色の選択も含めて。Tom Costerは、演奏、アレンジを含めて大好きなのですが、Gregg Rolieと違う色を出したいという本人の意識がやや空回りしたかな。もともと全然違うタイプだし。
今までサンタナの最高のメンバーによる最高の演奏結果の記録が、CD「ロータスの伝説」だと思い込んでいたので驚きでした。
でも、ミスが少なくきっちりしているのが一番いい演奏という訳でもないですし、一番勢いのあるステージをアルバムに焼き付けたのでしょう、きっと‥‥


Backstreet in Shanghai (2) 2012.8

さて、前回に続いて、サンタナ関連の素晴らしいブログのご紹介を。
どれも、この時期のサンタナにスポットライトを当てた、興味深い記事です。

★Chord of Life
(柊しじまさん)
Santana – Caravanserai(Side.A)

私のLink集に入れさせてもらっている方。
古今のロックの名曲を、Cubaseで打ち込んでアップされているのですが、何が凄いってそのコピーの精度には脱帽ものです。
私も、昔から色々とコピーをしてきましたが、メインメロディとコード位はなんとか聞き取っても、バックのシンセパッドとかは音程が聞き取れないものも多いし、昔のロックはそもそも録音が悪くて想像で音符を埋めざるを得ないパートも多いのに。さらに、YesとかKingCrimsonの20分以上の曲のすべての楽器をコピーしてアップしている。ほんとに驚異的です。
自分で弾いているギターも相当の腕ですし、恐らくキーボードもバリバリに弾けるはずです。
サンタナの曲も10曲アップされているので、全部聞いて見てください。
CaravanseraiのSide.A通しという信じられないものに、とりあえずリンクさせて頂きます。

サンタナ評としては、
>巷のサンタナの紹介記事はサンタナは次第に宗教色を強め、Caravanserai、Welcome、Borboletta
>の3枚はジャズに傾倒し人気を落としたが、1976年のAmigosで再びラテンロックに戻り‥‥復活した
>ということになっています。
>う~む、僕はそのジャズに傾倒していた頃が好きなんですが・・・(宗教色には目をつぶります。)
>時期的にはプログレ全盛期。

このあたりは、私を含めインスト系好きな今回の一連のブログ作者さん達と、まったく共通してます。

★灰とダイアモンドと月の裏側の世界
(風呂井戸さん)
サンタナ SANTANA の衝撃(3) 「キャラバンサライ」からの新展開

今はJAZZを中心に聞かれているようですが、ペンネームからわかるようにロック、とりわけプログレ方面にも非常に詳しい方。ロックのインスト部分に魅せられた人は、プログレ経由でフュージョン、ジャズというのが正常進化形なんでしょうか。ここに書かれている風呂井戸評サンタナは、私の感想と非常に近似です。Borbolettaを高く評価しているのも興味深い。

★「熱闘」のあとでひといき
(?さん)
サンタナ&マクラフリン『至上の愛』/断絶の時代に聴く対話の奥義
(2つ目の記事です。)

次の記述には笑いました。その通りだと思いますが。
>(サンタナが)もっとも人気がなかったのは? 私的にはこの作品『不死蝶』(ポルトガル語のタイトルは “Borboretta” )をリリースした70年代中盤頃ではないかと思う。

しかし、次のようにも言っています。
>現代の感覚で聴くと違った印象を抱くことになるから面白い。
>もしかしたら、歴代のサンタナの作品の中でも最高レベルの充実した作品にすら思えてくる。
>もしもサックスがウェイン・ショーターだったら文句なしの作品になっただろう。

1973年の日本公演、行きたかったな。当時よりも今、痛切に思うよ‥‥

Caravan Sarai(1972) By Santana 絶頂期の始まり
Welcome(1973) By Santana 異色作にしてMost Favorite One
Borboretta(1974) By Santana ラテンフュージョン3部作の終り

Borboretta(1974) By Santana ラテンフュージョン3部作の終り



Carlos Santana : Guitar, Vocal, Percussion
Tom Coster : Keyboards
Armand Peraza : Conga, Percussion
Jose Chepito Areas : Timbales, Percussion
David Brown : Bass
Jule Brussard : Sax
Leon Patillo : Vocal, Keyboards
Leon Chancler : Drums, Percussion
[Guest]
Michael Shrieve : Drums
Airto Moreira : Drums, Percussion
Flora Purim : Vocal, Percussion
Stanley Clarke : Bass
Michael Carpenter : Echo Prex

Caravan Sarai(1972)、Welcome(1973) 、Borboretta(1974)は、サンタナの中ではラテンフュージョン3部作とも呼ばれる異色作でした。Caravan Sarai以外は、当時のロックファンからはほとんど評価されませんでしたが、ブログをあさってみると、特にフュージョン、ジャズ好きからは高い評価を得ているような気がします。今聞いてみると、70年代後半のフュージョンブームを5年ほど先取りしていたサウンドだったんだなあ、という気がします。

Caravan Sarai(1972)と Welcome(1973)の記事は、こちらです。
Caravan Sarai(1972) By Santana 絶頂期の始まり
Welcome(1973) By Santana 異色作にしてMost Favorite One

3部作最後の Borboretta は、4thのトータルアルバムの香りでも、5thの洗練されたインストとボーカルの融合でもなく、いや両方をミックスしてしまったので、ストレートで美味しいコーヒーにミルクと砂糖を入れすぎてしまったような中途半端感で、少し散漫になってしまった気がします。1曲1曲は悪くない。ジャズ、フュージョン畑の人を沢山入れて作成したので、それぞれが曲を上手にこなしている。Return To Foeverだよ、といっても通用するくらいの曲もある。でも、以前からのロック畑のメンバーと明らかに異なる方向性だったので、コンセプト無しにやったセッションワークのような、悪い意味でパッチワークのような感じがします。

Flor De Canela から Promise Of A Fisherman への流れは Caravan Sarai そのもの。Life Is A New は Welcome に入っていてもおかしくない。(特にこの曲のドラムとキーボードはWelcomeとうり2つですが、誰なのか?)この時代の傑作は、実は同時期に発表された「ロータスの伝説」(1974)というのが衆目の一致した(いえ、私の)見方です。
サンタナ自身も、この路線を追及すればするほどミルクと砂糖を入れることになってしまうと気がついたのか、次のアルバムでは再びメンバーチェンジして、Amigos (1976)という原点回帰のようなアルバムに転換しています。しかしこれ以降、メンバーで音楽を作るというより、その時その時のやりたいサウンドにあったメンバーを集めるという感が一層強くなり、私も Michael Shrieve が脱退したあたりでいつの間にか興味を失っていった‥‥

いかにセールスを上げるかだけを目的に作られた商業ロックが、普通になってしまった時代からこの頃を振り返ると、まだまだミュージシャンがやりたいことをやっていた時代だったなあ、という気がします。80年代以降、ロックが急速にビッグビジネス化していく直前ともいえるでしょう。

ひょんなことからサンタナ3部作を書くことになってしまいました。
久しぶりにこの3枚を聞き、関係ブログをあちこち探ってみました。
以下は、相当聞きこんでいる作者のユニークな視点でのブログでお勧めです。
是非、こちらも訪問してみて下さい。作者の方へ連絡がつけばいいのですが。
⇒東京が大雪の夜、SilverSack様から連絡を頂きました。
Santanaの記事にあわせて、大橋純子の記事にもご感想を頂き、ありがとうございました。

★black noise/white silence
(TTBさん)
サンタナの人事異動を考える①~ラテンロック全開だった初期ラインナップ
(①~④までのシリーズ記事になっています。)

サンタナの頻繁なメンバーチェンジに焦点をあてた記事は、独特で非常に興味深いです。
>たまにいますよね、メンバーが音楽的な造詣が深くてどんなジャンルでもこなす器用な‥‥バンド。
>サンタナは違います。彼等は音楽性が変わるごとにメンバーも変わります。これでもかってくらい。
そのとおり!

>激動の70年代80年代を音楽性の激しい遷移と過剰なまでの人事異動で乗り切ってきたバンド
>サンタナの、(人事異動の)軌跡を追っていきたいと思います!!

サンタナのサウンドの変遷を、4回にわたりメンバー異動という切り口で書かれています。
こういう独自視点のブログは、ありきたりの曲の感想列記とは異なり、余程筆者の造詣が深くないと書けませんね。最近は余り更新されてないようですが、傑作記事だと思います。

★SilverSackのMusic Box
(SilverSackさん)
サンタナ -何かに取り憑かれた三年間- (1972~1974年)

(Welcome のリズム隊について、)
>当時私が演奏技術が高いと思って聞いていたプログレの面々(イエスとかELPとかキングクリムゾンとか)に比べても実は段違いにこちらがうまい、
>更に「テイル・スピニン」あたりのウェザーリポートのドラマーよりうまかったりするので、何という贅沢なリズムセクションなんだ、と思ってます。

70年代、80年代のロックが中心のブログ。サンタナの好みが私と同じ3枚で、特に、リズム隊の感想が私とまったく同じだったのには笑ってしまいました。世の中、広いのか狭いのか。

★心に残った音楽♪
(Bach Bachさん)
『SANTANA』
(2nd,3rd,4thは直後の記事にあります。)

ブログを通じて交流させて頂いている、音大で正規の音楽教育を受けているのに、ジャズ、ロックにも目茶詳しいという方。今となっては余り取り上げられない、1stから4thの記事です。
私は、友人の家で3rdを聞かせてもらって、ぶっ飛んで 4th(Caravan Sarai)から買い始めてファンになったので、実は1stと2ndを通して聞くのはつい最近、この記事がきっかけでした。
(ライブ等で曲はほぼ知っていましたが。) 
オルガンが好きだからサンタナを好きになったんだと、これまで思っていましたが、1stと2ndを聞いて、グレッグローリー(とキースエマーソン)に心酔したから、オルガンサウンドが好きになったんだ。と因果関係が逆転していたことに、今気が付きました。(笑)

どのブログも下手な音楽雑誌の批評より、よほど的確で興味深い‥‥‥

P.S. この記事をきっかけに、最近、ロータスの伝説を通して聞きました。(3枚組なので通して聞くのはかなり大変。)昔と違う印象を受けたところもあったので、近いうちに書いてみようと思います。

Feeling Now(1974)、Paper Moon(1976)、Rainbow(1977)、Crystal City(1977) By 大橋純子 20世紀最高の日本女性ボーカリスト

大橋純子
左上から時計回りで、Feeling Now、Paper Moon、Rainbow、Crystal City

1990年代以降、洋楽コンプレックスの無い世代が活動を始める以前、歌謡曲と呼ばれたボーカル音楽しかなかった時代を終わらせたのは大橋純子だったでしょう。
20世紀の日本で最高の女性ボーカリストだと信じています。

大橋純子との出会いは今でも覚えています。
多分、1977年の東京音楽祭だと思う。TVでその模様を中継していて、最後のアンコール曲で女性ボーカル4人がフロントに並び、1コーラスずつ歌っていく場面。3番目の大橋純子が歌い始めた瞬間、なんだこのボーカルは!と寝転がって聞いていた自分は思わず正座してしまった。他のボーカルとは全然比較にならなかった程のインパクトでした。

次の出会いは大学の学園祭。
高校生まで日本の音楽にはほとんど興味も無く洋楽一辺倒だった自分。学園祭で、同じサークルのバンドを聞いていると、かっこいいフュージョンぽいサウンドなのにボーカルは日本語。誰かのコピーを演奏していることはわかったが、今まで聞いたことのないサウンド。そのステージ終了直後にそのバンドのギターに聞くと、大橋純子のコピーだよと。

大橋純子は、ドラマの主題歌にもなった「たそがれマイ・ラブ」(1978)が最大のヒットとなったのですが、この曲がレパートリーの中でも一番の歌謡曲調の曲なので、良く知らない人からは、上手な歌謡曲畑の歌手と認識されていることが多かったのでは。大橋純子も、このヒット以降、この曲ばかり歌わされて嫌気がさしたといっているので、大きな違和感があったのでしょう。
彼女の魅力は、小柄な体格にそぐわない爆発的な声量とソウルフルな声質(と洋楽育ちのリズム感)なのですが、所属レーベルからは、商業歌曲で人気のある(ありきたりな)バラードにうってつけとみなされてしまい、これ以降、徐々に同様の曲調が増えてくる。当時急速に日本に入ってきたフュージョンタッチのバンドサウンドも、TV市場(歌謡曲市場)では、16Beatは大衆は聞き難いだろうというレーベルの方針で、徐々に歌謡曲風サウンドでやらされることが増え、ライブやアルバム作りで相当の葛藤がメンバーにあったとのこと。

メジャーレーベルに所属して会社の方針でLPを作る時代でなく、今のようにライブやYou Tubeで自分の好きなサウンドを発信できる時代だったら、彼女は真のポピュラー女性ボーカリストとして歴史に残ったと思うのですが‥‥

ということで、彼女が日本のポピュラー音楽に影響を与えた真の評価は「たそがれマイ・ラブ」以前の初期の4枚のアルバムであり、バンドサウンドとして一番刺激的で面白かったのは「美乃家セントラル・ステイション」に土屋昌巳がGt.として在籍していたRainbow(1977)とCrystal City(1977)の2枚だと確信しています。
ということで、初期の貴重な4枚をご紹介。


謹賀新年 平成30年

◆Feeling Now(1974)
レコード会社のオーディションで評価され、1stアルバムを発表。邦楽音楽界は、まだ歌謡曲専門の作曲家と編曲者が幅をきかせていた時代だったので、歌謡曲っぽくないアルバムにしようということで、最終的に12曲中8曲が洋楽のカバーという急造のアルバム。ただ今聞いてみると、原曲のよさはこれらカバー曲が際立っていて、意外なほどソウルフルな彼女のボーカルの実力が一番良くわかるのは実はこのアルバムかも。

PickUp) HE AIN'T HEVY....HE'S MY BROTHER バックのサウンドはまだ歌謡曲チックですが、既に彼女のソウルフルで黒っぽいボーカルスタイルの片鱗を聞くことができます。彼女も気に入った曲だったらしく、その後スタジオライブで頻繁に取り上げています。

◆Paper Moon(1976)
制作費がとれるようになったのか、著名作曲家とスタジオミュージシャン(といっても、村上ポンタ、岡沢章、杉本喜代志、深町純等の、今となっては誰でも知っている大御所。)を起用した2nd。表題曲等の佳曲が入っているのだが、世の中にまだ名前が知られず、水面下で頑張っていた最後のアルバム。

PickUp) Paper Moon ポンタと岡沢章のリズムと松木恒秀の16Beatカッティング。これに乗った大橋純子のボーカルは、洋楽一辺倒の楽器野郎にショックを与えました。その後、第1期美乃家セントラル・ステイションでの演奏がYouTubeに沢山アップされているので、聞き比べてみると興味深いです。

◆Rainbow(1977)
東京音楽祭での活躍とSimple Loveのヒットで、一気にメジャーシーンに浮上。
リズムとギター、キーボードのインストを前面に出した洋楽サウンドが、時代にマッチしライブで高い評価を得たことから、アマチュア時代の夢であった自分のバンドで活動することを決意。演奏、アレンジの中心であった佐藤健が中心となって若手メンバーを集め「美乃家セントラル・ステイション」結成。
(なお、佐藤 健(key)とはその後、結婚し今に至る。)
一番、青臭く刺激的な第1期メンバーは以下のとおり。
佐藤健(key)、見砂和照(ds)、土屋昌巳(g)、高杉登(per)、福田郁次郎(b)

PickUp) Simple Love 持ち味の声量を最大限いかしたボーカルはもちろん、バックのサウンドが1st,2ndと全然違う、いわゆるバンドサウンドになっています。同時期のスタジオライブを聞くとよりはっきり感じられます。

間違いなく、1977年第1期メンバーによる Simple Love (Studio Live)

◆Crystal City(1977)
福田郁次郎(b)がメンバーチェンジするも、バンドとして油の乗り切った状態で4thを発表。City Popsとしての一つの完成形がこのアルバムでしょう。歌謡曲でもロックでもない日本のポップスが完成。
今では考えられないでしょうが、当時、私の周りでは、ブレッカーブラザーズをやっているバンドがボーカルを入れて大橋純子を演奏したりとか、まったく違和感なくやられてました。

PickUp) Funky Little Queenie この時期の土屋昌巳(g)はファンクに傾倒していたようで、彼の作曲したこの曲を聞くと一聴瞭然。アメリカンソウルを彷彿とさせるオルガンが出色の出来。その曲調がソウルフルな大橋純子とマッチして、邦楽でも洋楽でもない魅力的な曲に仕上がってます。

4th発表の後、土屋昌巳(g)が抜ける一方「たそがれマイ・ラブ」が大ヒットする等でサウンドも微妙に変化し、そこからは彼女の第3ステージともいえる音楽活動が展開していきますが、とりあえずここで終了とします。
この時期の土屋昌巳(g)は、ストラトをコンプで徹底的につぶしたギターサウンドで、最初聴いた時、ずいぶん変わったサウンドだなと驚きましたが、ユニークなバンドサウンドのカラーになっていることは間違いありません。(例えば、曲Crystal Cityのギターパート。)

そのうち、彼女の曲を一つ取り上げてみるつもりです‥‥

In Search of the Soul Trees,Missing Piece of My Life,At the Edge of the World,Fractals,Elementals by Asturias

(12/1の記事を加筆修正して分割しました。)

L to R
In Search of the Soul Trees(2008)
Missing Piece of My Life (2015)
At the Edge of the World (2016)

そして2008年に多重録音サウンドの「In Search of the Soul Trees」を、この路線で「Missing Piece of My Life」 (2015)、「At the Edge of the World」(2016)を発表。1st~3rdに原点回帰した風でしたが、1st~3rdで時々顔を出したゲームミュージックのモティーフ(もちろん大山曜作曲の)は見かけなくなり、あくまで1人多重録音サウンドに徹しています。ゲストの比重も大分違う感じです。
実は、At the Edge‥はまだ未聴なので詳しく書けないのですが、自分のやりたいサウンドを思い切って追求したのかなと感じます。(現実的なことを言えば、並行で活動している第3世代エレアスがやっと商業的成功を納めて、やりたいサウンドをリリースすることが許されたのかな。)


L to R
Fractals (2011)
Elementals(2014)

多重録音サウンドと並行して、三度、 Asturiasを結成。この第3世代は、第2世代と差別化するため「Electric Asturias」エレアスと呼ばれています。メンバーは、平田聡(Guitar)、テイセナ(Violin)、川越好博(Keyboards)、田辺清貴(Drums)。このメンバーで「Fractals」(2011)、「Elementals」(2014)、「LIVE IN USA」(2017)の3枚を発表して現在に至っています。
実は、1990年からシンパシーを感じていたAsturias(なんと大山氏とメールのやり取りをしたことがあります。)のライブをやっと聞けたのも、この第3世代Asturiasでした。
(その時の Live Report はこちら)
今までの中では一番ライブ栄えがするサウンドのような気がします。事実、第3世代になってから頻繁にライブ活動を行っています。Reportにも書きましたが、ともかくライブでのViolinのサウンドが素晴らしい。Violinってロックの楽器?という位、ぴったりサウンドにはまっている。
第3世代がいつまで続くかわからないので、ここ10年位、刺激的な音楽を聴いたことがないなとお嘆きの方、一度生で聞いてみて下さい。


忍野八海(2) 2017.11

海外のフェスティバルに呼ばれて精力的な活動を始めたのも2005年あたりからで、海外のコアなファンの人気は相当なものです。Asturiasでググってみると、海外のファンが紹介するHPがいくつかヒットします。ま、この手の音楽は、コアなファンしかいないと言う方が正しいのでしょうが。
ご本人も、メキシコでのプログレフェスティバル「 BajaProg 2005 」で、大勢の海外の聴衆にそのサウンドが認められたのが、大きな転機だったと言っています。このあたりの経緯は、Asturias公式HPのBiography > Brief Historyに詳しいので、興味のある方はぜひ、本人の手によるライブフェスティバルレポートを読んでください。

第1世代、第2世代、第3世代、ライフワークとして続く多重録音サウンド(第0世代か?)と、自分のOne and Onlyのサウンドを作り続けてきた大山曜とAsturiasこそ、真にプログレッシブな音楽だと思います。これからも聞き続けたい。

今も机の前で、北辻みさの Violinと筒井香織のClarinetが、なり続けている‥‥‥

Circle in the Forest, Brilliant Streams, Cryptogam Illusion,Bird Eyes View,Marching Grass on the Hill by Asturias


L to R
1st Circle in the Forest (1988)
2nd Brilliant Streams (1990)
3rd Cryptogam Illusion (1993)

ネクサスレーベルから来春、Asturiasの1st,2nd,3rdが再発される。「日本を代表するプログレッシヴ・ロック‥‥の名盤、貴重盤、稀少盤を‥‥リイシュー」がうたい文句で80年代から90年代の廃盤101タイトルが再発されるとか。かつて聞いた層が、いい歳になって少しばかりの経済的余裕が出来たところに、著作権の関係で安価に再発できるコンテンツをぶつけて大人買いさせよう。なんて、斜に構えた見方は横において置いて、101タイトルを眺めると懐かしすぎて笑ってしまうくらいです。
(もっともこの3枚、2013年に、キングから再発されていますが。)

Asturiasとは、バンド名というより、大山曜というコンポーザーが、自己の音楽を表現する手段として、その時その時で一番適したメンバーを集めたユニットを命名したもの、と考えた方が近いようです。
大山曜は、"Tubular Bells(1973)"の Mike Oldfield に深く影響を受けていて、作品を聞けばすぐにわかるのですが、ピアノ、ギター、ベース等のマルチプレイヤーにして、クラシック音楽にもかなり影響されているのは間違いなく、その演奏パーツを自分の思い通りにコントロールする手段として、シーケンサー等を使用し多重録音サウンドを作り上げています。


忍野八海(1)   2017.11

1st,2nd,3rdのメンバーは、大山曜と、津田治彦(Guiter/新月)、花本彰(Keyboards/新月)、桜井和美(Drums/アフレイタス)という日本のプログレッシブロック界の名プレイヤー3人に、上野洋子(Vocal/ZABADAK)やクラシック系奏者をゲストに加えています。

1stを発表した1988年には、プログレッシブロック時代はとうに去っていて"Tubular Bells"に影響を受けたようなクラシック風味とニューエイジ風味を取り入れた曲は、一部のファンの評価しか得られませんでした。大衆に受け入れられるかどうかは、音楽の価値には何の関係も無いとは思いますが、商業ベースにのらないということは、早期の廃盤という形で世の中から忘れられる運命でした。多重録音をベースにしたサウンドはライブで再現しにくいことも有り、ライブ活動を余り行っていなかったのもメジャーになれなかった理由でしょう。全体としてはニューエイジミュージック的色彩が支配しているものの、「Brilliant Streams」 (1990)の1曲目”Highland”など、変拍子の重量感のあるプログレフュージョン的な曲などは、いかにもライブ受けしそうで、一度聞いてみたかった気がします。


L to R
4th Bird Eyes View (2004)
5th Marching Grass on the Hill (2006)

この後、ゲーム音楽クリエイターとして活動しつつも音楽シーンから遠ざかっていましたが、2003年にクラシック系ミュージシャンを集めて「Acoustic Asturias」(アコアス)として第2期をスタート。メンバーは、川越好博(Piano)、北辻みさ(Violin)、筒井香織(Clarinet,Recorder)というクラシック系の若手を集めていて、楽器編成を見ただけで普通でないのがわかると思います。(メンバーはその後、入れ替わっています。)「Bird Eyes View」(2004)と「Marching Grass on the Hill」(2006)を発表。

今、この2枚のアルバムを聞くと本当に素晴らしい。北辻みさのViolinと筒井香織の木管はすばらしい好対照で、これまで聞いたことのないサウンドを実現していた。「Bird Eyes View」の”Adolescencia”の鋭利な氷のようなViolinのメロディーと木管、ピアノ、「Marching Grass on the Hill」の”Coral Reef”の木管と大山のアコギのからみや、”Water Fall”の主題がViolinと木管で何度も変奏されている様を聞いて欲しい。川越好博もクラシック育ちらしく、時に対位法的なピアノサウンドがフロントの2人をしっかり支えている。コードで調性を支配するジャズ的奏法とは明らかに異なっている。

この時期は、大山曜だけでなく筒井香織もかなり曲つくりに加わっていたようで、プログレ色は薄れ室内楽的色彩がかなり強まっています。まさにOne and Onlyのサウンドだ。もともとは余りライブバンド指向でなかったAsturiasが、この時期はかなり活発にライブを行っていました。しかし、90~00年代前半は、個人的に音楽と最も離れていた時期で、ライブを1度も聞くことなく第2期は終了。
(ちなみに筒井香織さんは、現在はフランスで音楽留学兼音楽活動中です。日本に戻ってきたときに、クラシックどっぷりでなく Asturiasでクロスオーバーな活動を続けてくれることを期待します。)

リアルタイムでライブが聞けなかったのは本当に残念だ‥‥‥


Since 2012.9.23
プロフィール

Author:AKISSH
.
休日は、You Tubeで好きな曲を見つけて
コピーしたり、カメラ片手に旅を。
そして海外に飛び出そう。
(このブログについて)
(5th Anniversary)(その1)
(5th Anniversary)(その2;音源編)
(5th Anniversary)(その3;音源編)

毎日の花の色と四季で風景が変わるブログパーツ
画面下を人々がお散歩
旅行お役立ちブログ
検索フォーム

12345678910111213141516171819202122232425262728 02